小川 未明
夕雲
お庭の垣根のところには、コスモスの花が、白、うす紅色と、いろいろに美しく咲いていました。赤とんぼが、止まったり、飛びたったりしています。お母さんは、たんすのひきだしにしまってあった、浅黄木綿の大きなふろしきを出して、さおにかけ、秋の日に干していられました。ふろしきをひろげると、白く染めぬいた紋が見えました。
「お母さん、大きなふろしきですね。」と、もも子さんは、お縁側で見ていて、いいました。
「もう三十年も前になります。私がお嫁にきたときに、おふとんを包んできたのですよ。昔の木綿ですから、まじりがなくてじょうぶです。こんど、おまえがお嫁にいくときは、これにおふとんを包んであげますよ。」と、お母さんは、おっしゃいました。
もも子さんは、なんだかうれしいような、悲しいような気持ちがして、ぼんやりと日がほこほこと当たる、布をながめていました。