小川 未明
世の中へ出る子供たち
一
正吉の記憶に、残っていることがあります。それは、小学校を卒業する、すこし前のことでした。ある日、日ごろから仲のいい三人は、つれあって、受け持ちの田川先生をお訪ねしたのであります。先生は、まだ独身でいられました。アパートの狭いへやに住んでいられて、三人がいくと喜んで、お茶を入れたり、お菓子を出したりして、もてなしてくださいました。
「君たちの卒業も、だんだん近づいたね。もうこれまでのように、毎日顔を合わせることができなくなる。小原くんは、入る学校がきまったかね。」と、一人の方を向いて、おっしゃいました。
「はあ、兄さんが、中学校へ入ったらいいというのですけれど。」と、小原は、下を向きました。