小川 未明

文章を作る人々の根本用意

一 根本的用意とは何か

一概に文章といっても、その目的を異にするところから、幾多の種類を数えることが出来る。実用のための文書、書簡、報道記事等も文章であれば、自己の満足を主とする紀行文、抒情叙景文、論文等も文章である。

こゝには主として後者即ち文学的味いを生命とする文章を目標とし、特にその作法の根本的用意を述べたいと思う。

われ/\が、何か思うところ、感ずるところを書きたいと望むことがある。そこで、先ずわれ/\は、最初に自分の感じを抽き出す文字を、あれこれと選択しつゝ紙に書いてみる。それが自分の感じとぴったり合しつゝ書き進むるようならば、もう文章のある域まで達したのであるが、これと反対に思うところ感ずるところが、一字一行にも骨が折れてどうにも書き進められない場合がある。徒らに苦んだ果は、自分には所謂文章が書けないのではないかと絶望したような心持にさえなる。

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