小川 未明
何を作品に求むべきか
作品が、その人の経験を物語り、それ等の事実から人生というものを知らしめるにとゞまって、これに対する作家の批評というようなものがなかったら、何うであろう。最も、ある人々は却って、芸術に、その批評を必要としないという者がある。
それ等の人々は、たゞ、経験をありのまゝに語ればいゝというのだ。その経験は裏付けられた、作家の主観が、即ち、その作品の厚みであり、深さであるから、批評めいたものを、必要としないというにある。
主観の必要なことは、いまさら言うを要しない。たゞ、批評ということに、全部の問題がかゝっているのだ。
然らば事件という事はそんなに重要なことか。重要なら、何のために重きをなすのか。それが、畢竟作品に変化を与え、面白く読ませるというに過ぎないなら、そこに疑いがあるであろう。