小川 未明
反キリスト教運動
一
一体宗教というものが科学によって破壊されるものかどうかと云うことが疑問だ。科学によって破壊されるような宗教は宗教ではない。換言すれば、知識によって破壊されるような信仰は信仰ということが出来ない。私は人間の安心というものが科学によってのみ保証されるとは思っていない。人間性というものが、科学との間に矛盾を来たすとも考えていない。唯物史観は真理であるけれども、人間の精神的の飛躍がなかったら創造されぬ如く、感情の真も知識の真も畢竟するところ合致すべき一点があるように考えられる。
二
その話は別として、先般の反キリスト教同盟というものは、まさに昨年四月から北京に開かれた世界キリスト教青年大会と対立して気勢を挙げたものだ。そうして反キリスト教同盟は「キリスト教は科学の信仰を阻止し、資本主義の手先になって、他国を侵略する」ということが、その宣言の一つである。私は原始キリスト教の精神というものが決して今日の職業化した街頭のキリスト教とは思っていない。本当に原始キリスト教の精神を尚お伝え得るものならば、今日のキリスト教は斯くまでに堕落はしていないだろう。