小川 未明

正に芸術の試煉期

今度の震災の災禍が、経済上にまた政治上に、影響し、従って複雑な関係を個人生活の上にも生じた点が少くない。その中に於て、文学業者の生活は、元来が、一面社会的であると共に、一面は、全く個人的のものであったと言うことができる。

今日、私は、独り芸術とは限らないが、まず芸術に、それが危機にあると言い得るのは、その作者と立場との関係が、極めてデリケートに置かれているからである。

要するに、作者の人格をおいてこの問題は他にないには違いない。けれど、その個人的であると社会的であるとは、一にその人の素質にもより、傾向にもあることであって、これによって、直に人格について批評されないものもあるが、また一面から言えばその立場を明かにすることによってます/\その作家の素質と、作品の価値を定むることにもなるのである。

芸術の目的が人間の理想の追求であり、そして、この芸術的感激が現実に対する不充、反抗に他ならんとしたら、そこに、妥協されない何ものかゞなくてはならぬ。

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