小川 未明
読んできかせる場合
お母さんたちが、何か心配なことでもあって、じっと考えていられるとします。いつもなら、快活にお話なさるものが、その時ばかりは、全く、言葉さえなく口を噤んで、そして、いつもにこ/\として、やさしい顔から、笑の影の絶えなかったものが、なんとなく打ち沈んで、瞳をひとゝころに落していられたとします。
たとえ、その様子に対して、何人もが、注意しなくとも、かならず、あなた達の小さな坊ちゃんや、お嬢さんは、眼敏く、お母さんの顔色を読むにちがいありません。そして傍に寄って来て、
「どうしたの? お母さん。ねえ、どうしたの? お母さん」
こう言って、問うでありましょう。そうして、小さな心を満足するだけの返事をきかぬうちは、その言葉をくり返えすにちがいありません。