小川 未明
希望
夏の晩方のことでした。一人の青年が、がけの上に腰を下ろして、海をながめていました。
日の光が、直射したときは、海は銀色にかがやいていたが、日が傾くにつれて、濃い青みをましてだんだん黄昏に近づくと、紫色ににおってみえるのでありました。
海は、一つの大きな、不思議な麗しい花輪であります。青年は、口笛を吹いて、刻々に変化してゆく、自然の惑わしい、美しい景色に見とれていました。
「昨夜も同じ夢を見た。はじめは白鳥が、小さな翼を金色にかがやかして、空を飛んでくるように思えた。それが私を迎えにきた船だったのだ。」