小川 未明

黒いちょうとお母さん

このごろ毎日のように昼過ぎになると、黒いちょうが庭の花壇に咲いているゆりの花へやってきます。

最初、これに気がついたのは、兄の太郎さんでした。

「大きい、きれいなちょうだな。小鳥ぐらいあるかしらん。弟が見つけたら、きっとつかまえてしまうだろう、今年の夏は、すばらしい昆虫の標本をつくるのだといっていたから。弟の帰らないうちに、はやく逃げていってしまえばいいにな。」

太郎さんは、こう思いながら、白いゆりの花にとまってみつを吸っているくろあげはを見守っていました。ちょうは、すこしの不安もなく、さもたのしそうに、花にたわむれているごとく見えました。

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