小川 未明
三月の空の下
花の咲く前には、とかく、寒かったり、暖かかったりして天候の定まらぬものです。
その日も暮れ方まで穏やかだったのが夜に入ると、急に風が出はじめました。
ちょうど、悪寒に襲われた患者のように、常磐木は、その黒い姿を暗の中で、しきりに身震いしていました。
A院長は、居間で、これから一杯やろうと思っていたのです。そこへはばかるような小さい跫音がして、取り次ぎの女中兼看護婦が入ってきて、
小川 未明
花の咲く前には、とかく、寒かったり、暖かかったりして天候の定まらぬものです。
その日も暮れ方まで穏やかだったのが夜に入ると、急に風が出はじめました。
ちょうど、悪寒に襲われた患者のように、常磐木は、その黒い姿を暗の中で、しきりに身震いしていました。
A院長は、居間で、これから一杯やろうと思っていたのです。そこへはばかるような小さい跫音がして、取り次ぎの女中兼看護婦が入ってきて、