小川 未明

空晴れて

山間の寂しい村には、秋が早くきました。一時、木々の葉が紅葉して、さながら火の燃えついたように美しかったのもつかの間であって、身をきるようなあらしのたびに、山はやせ、やがて、その後にやってくる、長い沈黙の冬に移らんとしていたのです。そこにあった、みすぼらしい小学校へは、遠く隣村から通ってくる年老った先生がありました。日の長い夏のころは、さほどでもなかったが、じきに暮れかかるこのごろでは、帰りに峠を一つ越すと、もう暗くなってしまうのでした。

「先生、天気が変わりそうです。早くお帰りなさらないといけません。」

少年小使いの小田賢一は、いったのでした。子供たちは、すべて去ってしまって、学校の中は、空き家にも等しかったのです。教員室には、老先生が、ただ一人残って、机の上をかたづけていられました。

「小田くん、すこし、漢文を見てあげよう。用がすんだら、ここにきたまえ。」と、老先生は、いわれた。

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