小川 未明

父親と自転車

吉坊は、父親に、自転車を買ってくれるようにと頼みました。

「そんなものに、乗らなくたって、いくらでも遊べるでないか、ほかの子供をけがさしてみい、たいへんだぞ。もうすこし大きくなってから、買ってやる。」と、父親は頭を振りました。

「清ちゃんも、徳ちゃんも、みんな自転車を持っているのに、僕だけ持っていないのだもの、つまんないなあ。」と、吉坊は、いくら頼んでもむだなことを悟ると、歎息をしました。そのくせ、父親は金があれば、すぐに酒を飲んでしまうことを知っていたのです。

吉坊は、外へ出ると、友だちが自転車に乗って、愉快そうに走っているのを、うらやましそうにながめていました。

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