小川 未明

一粒の真珠

ある町にたいそう上手な医者が住んでいました。けれど、この人はけちんぼうで、金持ちでなければ、機嫌よく見てくれぬというふうでありましたから、貧乏人は、めったにかかることができませんでした。

それは、雪まじりの風の吹く、寒い寒い晩のことです。

「こんな晩は、早く戸を閉めたがいい。たとえ呼びにきても、金持ちの家からでなければ、留守だといって、断ってしまえ。」といいつけて、医者は、早くから暖かな床の中へ入ってしまいました。

ちょうど、その夜のことでした。この町から二里ばかり離れた、さびしい村に、貧しい暮らしをしている勇吉の家では、母親の病気が募るばかりなので、孝行の少年、勇吉は、どうしていいかわからず、おどおどとしていました。父は、彼が三つばかりのとき、戦争に出て死んでしまったのです。その後は、母と二人で、さびしく暮らしていました。母が、野菜を町へ売りにいく手助けをしたり、鶏の世話をしたりして、母の力となっていました。

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