小川 未明
冬のちょう
すがすがしい天気で、青々と大空は晴れていましたが、その奥底に、光った冷たい目がじっと地上をのぞいているような日でした。
美しい女ちょうは、自分の卵をどこに産んだらいいかと惑っているふうでありました。なるたけ暖かな、安全な場所を探していたのでした。
もう、季節は秋の半ばだったからです。その卵が孵化して一ぴきの虫となって、体に自分のような美しい羽がはえて自由にあたりを飛べるようになるには、かなりの日数がなければならぬからでした。
「ああ、かわいそうに、こんな時分に生まれてこなければよかったのに……。」といって、女ちょうはまだ見ない子供のことを憂えたのでありました。