小川 未明
古いはさみ
どこのお家にも、古くから使い慣れた道具はあるものです。そしてそのわりあいに、みんなからありがたがられていないものです。英ちゃんのおうちの古いはさみもやはりその一つでありましょう。
英ちゃんの、いちばん上のお姉さんが小さいときに、そのはさみで折り紙を切ったり、また、お人形の着物を造るために、赤い布や紫の布などを切るときに使いなされたのですから、考えてみるとずいぶん古くからあったものです。
その時分にはこんな黒い色でなく、ぴかぴか光っていました。そして刃もよくついていてうっかりすると、指さきを切ったのであります。
「よく気をつけて、おつかいなさい。おててを切りますよ。」と、お母さんが、よく、ご注意なさったのでした。