川田 雪山・川田 瑞穂・楢崎 竜

千里駒後日譚

川田雪山、聞書「土陽新聞」連載、明治三十二年十一月

(一回)

御一新前土佐藩から出て天下を横行した海援隊の隊長に阪本龍馬と云ふ豪傑が有つて、又其妻に楢崎お龍と云ふ美人で才女で、加之に豪胆不敵な女のあつた事は諸君善く御承知でせう、其お龍が今猶ほ健固で相州横須賀に住んで居る。僕は近頃屡ば面会して当時の事情を詳しく聞ひたが、阪崎氏の「汗血千里駒」や民友社の「阪本龍馬」などとは事実が余程違つて居る、符合した処も幾干か有るが鷺を鴉と言ひ黒めた処も尠なからぬ。もし此儘で置ては徒だ後世を誤る斗りと思ふから聞ひた儘を筆記して、土陽新聞の余白を借り、諸君の一粲を煩す事にしました、唯だ文章が蕉拙くつて這の女丈夫を活動させることの出来ないのが如何にも残念です。

又この後日譚に就ての責任は一切僕が引受ます。

青空文庫の作品カード