三遊亭 円朝

粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)

一

さて今日から寛保年間にございました金森家の仇討のお話で、ちとお話にしては堅くるしゅうございますから、近い頃ありましたお話の人情をとりあわせ、世話と時代を一つにして永らくお聞きに入れましたお馴染のお話でございますが、ちと昔の模様でございまして、草双紙じみた処もございます。粟田口國綱と云う名剣が此の金森家にございます。これはその北條時政の守刀で鬼丸と申します名刀がございました、これと同作でございまする。かの國綱の刀の紛失から末が敵討になりまする。このお話の発端は、寛保三年正月の五日でございます。昔も今も変りませんのは、御婦人は春羽根をつき毬をついてお遊びなさいます。男の児は紙鳶といって凧を揚げるというのが春の遊びで、どこともなく陽気なものでございます。一体空を見るのは薬だというので、皆仰向くような遊びでございますから、紙鳶をびい/\/\と揚げますれば、是非子供は空を見なければなりません。また羽根を突けば必ず空を見る。只今あの皆様が椅子にかゝってコップで御酒を飲る時は、仰向いてグーッと飲まなければならんような事になって居りまする、つまり人間の健康のために致すことで、アノ羽根を突くのをよく/\聞いて見ますれば、あれは蚊に喰われないまじないだと申しました方がございますから、どういう訳かと質ねましたらば、子守が児を負いまして、カチーリ/\と羽根を突くと云うと、むくれんじの玉の返る処が蜻蛉という虫に似て居りますから、蜻蛉返りと云って、くる/\ッと返る、蜻蛉と云うものは蚊を捕り喰う虫だと云うので、赤ん坊の頭を蚊に喰わさんがためにカチーリと羽根を突き、くる/\ッと返ると蚊が逃げるんだそうです

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