田中 貢太郎
雪の夜の怪
昼間のうちは石ばりをしたようであった寒さが、夕方からみょうにゆるんでいる日であった。私はこの比よく出かけて往く坂の上のカフェーで酒を飲みながら、とりとめのないことをうっとりと考えていた。
「や、雪だ」
「ほんとだわ」と云ういせいの良い壮い男の声と、あまったれたような女の声が絡みあうなり、入口のガラス戸が敷居の上に重い軋りをさした。
「雪だわよ」
田中 貢太郎
昼間のうちは石ばりをしたようであった寒さが、夕方からみょうにゆるんでいる日であった。私はこの比よく出かけて往く坂の上のカフェーで酒を飲みながら、とりとめのないことをうっとりと考えていた。
「や、雪だ」
「ほんとだわ」と云ういせいの良い壮い男の声と、あまったれたような女の声が絡みあうなり、入口のガラス戸が敷居の上に重い軋りをさした。
「雪だわよ」