田中 貢太郎
追っかけて来る飛行機
昭和六年の夏の夜のことであった。大連で夜間飛行の練習をやっていると、計器盤のある処に点いているライトの光で、その黒塗の計器盤に、己の乗っている飛行機の後から、今一台の飛行機がやはり同じ方向に向って飛んで来るのが映った。
そんなことはない、錯覚だ、と思いながら計器盤を見るとやはり映っている。とうとううす鬼魅が悪くなって、その夜の練習を中止したことがあったが、こうした錯覚や幻想は決して珍らしいことではない。
某時壮い飛行士が、
「海賊があるから、やがて空賊と云うのができるかも知れないよ」