田中 貢太郎

妖影

※(ローマ数字1、1-13-21)

私はこの四五年、欲しい欲しいと思っていた「子不語」を手に入れた。それは怪奇なことばかり蒐集した随筆であって、序文によるとその著者が、そうした書名をつけたところで、他に同名があったので、それで改めたものらしい。表紙には「新斎諧」としてある。それは私の家へ時折遊びに来る男が、知らしてくれたものであった。

「大学前の、あの和本屋にあるのですよ、新斎諧と云うのでしょう」

と、その男は云った。それは十二三冊の小さな黄表紙の唐本で、明治四十年比、私は一度浅草の和本屋で手に入れたが、下宿をうろついている間に無くしたので、この四五年欲しいと思っていた。この春、芥川龍之介氏と逢った時にも「子不語」の話が出て、

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