正岡 子規

日光の紅葉

春の花は見るが野暮なり、秋の紅葉は見ぬが野暮なりと独り諺をこしらへて其言ひわけに今年は日光の紅葉狩にと思ひ付きぬ。先づ鳴雪翁をおとづれてしか/″\のよしをいへば翁病の床より飛び起きて我も行かんと勇み給ふ。さらば思ひ立つ日を吉日として上野より汽車を駆り宇都宮に一泊せし日は朝来の大雨盆を傾けていつ晴るべしとも知らぬに何が吉日ぞ。こゝはいくさの跡とてはたごやはまだ何となく騒がしきに強ひて一夜の憐を請ふて木枕の痕を頭にぞ残しける。

木枕に惟然泣く夜の長さかな

翁は腹痛みて終夜眠り給はざりしとて暁に余を呼び醒まし

若人をゆり起したる夜長かな   鳴雪

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