古川 緑波

下司味礼賛

宇野浩二著『芥川龍之介』の中に、芥川龍之介氏が、著者に向って言った言葉、

……君われわれ都会人は、ふだん一流の料理屋なんかに行かないよ、菊池や久米なんどは一流の料理屋にあがるのが、通だと思ってるんだからね。……

というのが抄いてある。

そうなんです、全く。一流の料理屋というのは、つまり、上品で高い料理屋のことでしょう! そういう一流店でばっかり食べることが通だと思われちゃあ、敵わないと僕も思うのである、そりゃあ、そういう上品な、高い料理を、まるっきり食わないというのも、可笑しいかも知れない。たまにゃ、一流もよろしい。が、然し、うまい!って味は、意外にも、下司な味に多いのである。だから、通は、下司な、下品な味を追うのが、正当だと思うな。

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