北原 白秋

海豹と雲

序

風格高うして貴く、気韻清明にして、初めて徹る。虚にして満ち、実にしてまた空しきを以て、詩を専に幻術の秘義となすであらう。

鳥の※(「皐+栩のつくり」の「白」に代えて「自」、第3水準1-90-35)る、ただに尋常の行であらうか。海豹の水に遊ぶ、誰かまた険難の業とのみ判じよう。雲は太古にして若く、波は近う飜つて、かへつて帰する際涯を知らない。

詩は我が生来の道である。その表現の玄微に好んで骨を鏤る。畢竟は我がふたつなき楽みを我と楽むのである。ただ志して未だ風韻の神に到らず、境涯整はずして、また未だ苦吟の傷痕を脱し得ざるを恥づる。

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