金 史良

土城廊

一

牛車や荷馬車、貨物自動車等のごったがえしている場末の鉄道踏切を渡ると、左の方へ小さな田圃路が折れている。その辺りからは路もぬかるみ、左右の水溜りでは雨蛙が威勢よく騒いでいた。小雨は音もなく夕暮の沼地をしっとりと濡らしている。

二人が、お互い黙々と歩いている中に、もう辺りは暗くなった。いくらか屠殺場の附近がぼうっと薄明るいだけだった。淡い電灯の光芒は水田の稲の穂がしらを白っぽく照らし、跫音に驚いた雨蛙は田の中へ音を立てて飛び込んだ。家畜小屋からは時たま豚がけたたましく金切声を上げていた。

二人は屠殺場の前を通りしなに幾人かの男達に出遇った。

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