グルモン レミ・ドゥ

わるい花

花屋の前を通り過ぎた。威勢よく反身になつてゐる花もある、しよんぼりと絶え入つてゐる花もある、その花屋の前を通りすがると、妙に氣を搖る意地の惡い香がした、胸苦しいほど不思議の香がした。そこでなかへ入つて行つて尋いてみた。

「おかみさん、どうぞ、その花をお呉んなさい、その一つで三つの花、薔薇と鈴振花と茉莉花の三つの香がする薫の高い意地惡さうな花をさ。その變にほんのりと匂つて來て胸苦しくさせる花をお呉んなさい。

「旦那、もう茉莉花も、薔薇も鈴振花も、すつかり切らしました。何ぞほかに新しい花を召しますのなら、どうか名を仰有つて下さいまし、女の胸の上、戀人の床の上に萎れる花の名はみんな存じてをりますから。

「おかみさん、その一つで三つの花といふのは、新しい花ぢや無いよ。丁度私と同年ぐらゐの花だが、暴風の晩に萎れて了つたかも知れない。

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