吉川 英治

宮本武蔵

序

初版が出たのさえ十数年前だった。起稿を思い立った日からでは、もう、二十年ちかい歳月がながれている。

この書が、装幀を新たに、版をかさねて出るとなると、いつも私は過去茫々の想いにたえない。じつに世のなかはその間にすら幾変りも変遷してきた。

さる人が私にいった。「あなたの宮本武蔵はもう古典ですよ、一つの古典として在るわけでしょう」と。なるほど、そんなものかもしれないと私も苦笑した。それならそれで望外なことだと思う。

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