吉川 英治
鳴門秘帖
送り狼
未明のうちに、本郷森川宿を出たお綱と万吉とが、中仙道をはかどって、もうそろそろ碓氷峠の姿や、浅間の噴煙を仰いでいようと思われる頃、――三日おくれて、同じ中仙道の宿駅に、三人づれの浪人を見ることができる。
それが、例の、お十夜と、一角と周馬であった。
こん度の旅は、無論、お綱と万吉のあとを追って、そのうえに、法月弦之丞を刺止めるまでの目的だろうに、わらじ、野袴、編笠という、本格の支度をしているのは天堂一角だけで、周馬は笠なし、お十夜は、笠もわらじも嫌いだといって、素のまま着流しに草履ばきという風態。