吉川 英治
三国志
諸葛菜
一
三国鼎立の大勢は、ときの治乱が起した大陸分権の自然な風雲作用でもあったが、その創意はもともと諸葛孔明という一人物の胸底から生れ出たものであることは何としても否みがたい。まだ二十七歳でしかなかった青年孔明が、農耕の余閑、草廬に抱いていた理想の実現であったのである。時に、三顧して迎えた劉玄徳の奨意にこたえ、いよいよ廬を出て起たんと誓うに際して、
「これを以てあなたの大方針となすべきでしょう。これ以外に漢朝復興の旗幟を以て中原に臨む道はありますまい」
吉川 英治
諸葛菜
一
三国鼎立の大勢は、ときの治乱が起した大陸分権の自然な風雲作用でもあったが、その創意はもともと諸葛孔明という一人物の胸底から生れ出たものであることは何としても否みがたい。まだ二十七歳でしかなかった青年孔明が、農耕の余閑、草廬に抱いていた理想の実現であったのである。時に、三顧して迎えた劉玄徳の奨意にこたえ、いよいよ廬を出て起たんと誓うに際して、
「これを以てあなたの大方針となすべきでしょう。これ以外に漢朝復興の旗幟を以て中原に臨む道はありますまい」