吉川 英治

私本太平記

下天地蔵

まだ除夜の鐘には、すこし間がある。

とまれ、ことしも大晦日まで無事に暮れた。だが、あしたからの来る年は。

洛中の耳も、大極殿のたたずまいも、やがての鐘を、偉大な予言者の声にでも触れるように、霜白々と、待ち冴えている。

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