吉川 英治

私本太平記

石の降る夜

古市の朝は、舟の櫓音やら車の音で明けはじめる。

ほどなく、散所民のわめき声だの、赤子の泣き声。そして、市の騒音も陽と共に高くなり、やがて型どおりな毎日の生態と砂塵が附近一帯をたち籠めてくる。

「まだ帰らぬの」

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