吉川 英治
春の雁
春の雁
からっとよく晴れた昼間ほど、手持ち不沙汰にひっそりしている色街であった。この深川では、夜などは見たこともないが、かえって昼間はどうかすると、御旅の裏の草ッ原で、子を連れて狐が陽なたに遊んでいたりする事があるという。
――通船楼の若いおかみさんは、
「何だえ、包み始めてさ。……負けずに持って帰るつもりかえ」
吉川 英治
春の雁
からっとよく晴れた昼間ほど、手持ち不沙汰にひっそりしている色街であった。この深川では、夜などは見たこともないが、かえって昼間はどうかすると、御旅の裏の草ッ原で、子を連れて狐が陽なたに遊んでいたりする事があるという。
――通船楼の若いおかみさんは、
「何だえ、包み始めてさ。……負けずに持って帰るつもりかえ」