吉川 英治

茶漬三略

柾木孫平治覚え書

人々は時の天下様である太閤の氏素姓を知りたがった。羽柴筑前守秀吉あたりから後のことは、誰でも知っていたが、その以前の彼を知りたがった。

わけて、小猿とか、日吉とか呼ばれて、姓さえろくになかった時代の生い立ちを知りたがった。

けれど太閤は、自分の素姓については、生涯、人に語った例がどうもなかったようである。

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