小川 未明
『お話の木』を主宰するに当たりて宣言す
次の時代を建設する者が、今日の子供達であると知る時、私達は、未来への希望と理想を子供達に対して持たないであろうか。それ故に子供達の情智を啓発する読み物については、殊更厳粛な気持ちとならざるを得ないのであります。現在児童の雑誌は多数あるけれど、よく見ると、果たしてこれでいいのかという疑いが起こる。そして、それ等の読み物が、純真無垢な子供等に与える感化について、深く考えざるを得ないのであります。
一口にいえば、どこに児童に対する真の愛が見られよう。またどこに人生への正しき導きというものがあろう。またどこに高らかな清明な詩があるであろうか。
多くは、誇張、虚飾にあらざれば、著しく卑俗にして、小さき者の弱点に附け入る如き記事や、絵面に満されています。恐らくその結果は、少年をして質実堅忍な気風を慕うよりか、軽躁飄逸を喜ぶことになり、正しきためには、自己をも犠牲にせんとする純情よりは一掴千金の富貴と成功を夢むこととなり、いつしか高邁なる勧学の精神を失うと共に、読書力の低下を示すでありましょう。このことは当然であって、敢えて不思議とはしないのであります。
此の如きは、たとえ雑誌が商品なる故に、営利が目的としても、成人の場合なら知らず相手が正直な児童であるかぎり、良心的に許されざることであり、一方、真理へ向かって歩む文化への冒涜でなければならぬのであります。