小川 未明
愛は不思議なもの
生活に差別のあるのは、ひとり、幾万の人間の住んでいる都会ばかりでありません。田舎においても同じであります。その村は、平和な村でありましたけれど、そこに住んでいる人々は、みんな幸福な身の上というわけではありませんでした。
おしずは、小さい時分に、父母に死に別れて、叔母の家で育てられた孤児でありました。そして、十七、八のころ、村のある家に奉公したのであります。その家の人たちは、情けある人々でした。
「おしずは、両親も、兄妹もないのだから、かわいがってやらなければならぬ。」といって、そこの人たちは、いたわってくれました。
彼女は、四つになる坊ちゃんの守りをしたり、家の仕事をてつだったりして、毎日つつましやかに働いていました。