小川 未明
おばあさんとツェッペリン
おばあさんは、まだ、若い時分に、なにかの雑誌についている口絵で見た、軽気球の空に上がっている姿を、いつまでも忘れることができませんでした。
青い色が、ところどころに出て、雲の乱れた空を高く、その軽気球は、風船球を飛ばしたように、上がっていました。それには、人が乗っていて、下方にたむろしている敵軍のようすを偵察していたのであります。すると、これを射落そうと、敵の騎兵が軽気球を目がけて、発砲していました。その白い煙が輪を巻いているのすら、記憶に残っています。
これは、☆普仏戦争の画報でありました。いっしょに、この絵を見たおじいさんは、いいました。もとより、おじいさんも若かったのです。
「いんまに、きっと、人間が、鳥のように、空を飛ぶようになるぞ。」