小川 未明

死と話した人

Aは、秋の圃へやってきました。夏の時分には、小道をふさいで、脊高く伸びていた、きびや、もろこしの葉は、褐色に枯れて、茎だけが、白さびの出たと思われるほど、かさかさにひからびて、気味悪く光っていました。そして、ところどころに、赤い実のとうがらしが、頭を上げて、すきとおるような、青い空をながめていたのです。

もう、北の方から吹いてくる風は、なんとなく冷ややかでした。あたりは、しんとして、これらの景色は、ガラスに描かれた絵のように、音もなかったのでした。

彼は、なんの気なしに、圃の中へはいってゆきますと、見知らぬ大きな男が、すぐ前に突っ立っていました。

「見なれない百姓だな。」と思って、彼も、立ち止まって、その顔を見上げますと、赤銅色に日に焼けて、角張った顔は、なんとなく、残忍な相をあらわして、あちらをにらんで、身動きすらしなかった。鼻の先がとがって、両眼が落ちくぼんで、手ぬぐいで向こうはち巻きをして、きっと口をむすんでいます。

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