小川 未明
都会はぜいたくだ
デパートの高い屋根の上に、赤い旗が、女や子供のお客を呼ぶように、ひらひらとなびいていました。おかねは、若い、美しい奥さまのお伴をしてまいりました。
そこには、なんでもないものはありません。みるもの、すべてが、珍しいものばかりでした。
東京へ出てきてから、奥さまにつれられて、方々を歩くたびに、田舎のさびしいところで働いて暮らす、お友だちのことを思わぬことはなかったのです。
「おつねさんなんか、こんなにぎやかなところは知らないのだ……。」と思うと、青々とした田圃の中に立っている、友だちの姿がありありと見られました。