小川 未明
春の真昼
のどかな、あたたかい日のことでありました。静かな道で、みみずが唄をうたっていました。
田舎のことでありますから、めったに人のくる足音もしなかったから、みみずは、安心して、自分のすきな唄をうたっていました。
「おれほど、こう長く、息のつづくうまい歌い手は、世間にそうはないだろう。」と、心のうちで自慢していました。
あたたかな春風は、そよそよと空を吹いて、野原や、田の上を渡っていました。ほんとうに、いい天気でありました。あたりのものは、みんな、みみずの鳴き声にききとれているように、だまって、ほかに音がなかったのです。