小川 未明
二人の軽業師
西と東に、上手な軽業師がありました。綱から、綱に飛びうつり、高いはしごの上でもんどりを打ち、見ていて、ひやひやすることをも手落ちなく、やって見せましたから、その評判というものは、たいへんなものでありました。西の方の人は、西の都で、興行をする甲の男をほめました。東の方の人は、東の都で、興行をする乙をほめました。
「さあ、どちらがうまいだろうな。」
両方の軽業師のするのを見たものは、頭をかしげました。それほど、この二人の芸は、人間ばなれがしているといってよかったのです。最初から、こんなあぶない芸当というものはできるものでありません。それには、血の出るようなけいこを積んだからです。
いつしか、西の都で、人気を呼んでいる甲の耳に、東の都で、やはり、たいへんな人気を呼んでいる乙の評判がはいりました。