牧野 信一

S・I生へ

本誌の二月号に、君が書いた、僕に関するスケツチ文は、稀に見る非常識な、失敬な文章である。

僕は、在学中適齢に達したが、猶予願ひすらせずに堂々と検査をうけたものだ。君は、どんなつもりで書いたのかも知れないが、縦令一言半句でも、僕の国民としての名誉を傷けるやうな文句を、疎かに使はれては迷惑千万だ。僕は、忠良なる日本国民である。僕は、君の云はれるやうな「ヱビス」のやうな強さはもたないが、不幸にして痩躯こそ恵まれてゐるが、愛国的情熱をもつ青年である。

十一貫たらず、などゝ好くも君は僕の目方などが解つたものだ、君は、何時僕の目方を計つたことがあるのだ。

また、ロクでもない観察の眼で僕の家庭などをスケッチされては困る。君などに僕の小説と生活とを混同されてはやりきれない。あんな風に書いたら僕が、喜ぶとでも思ふのか、喝!

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