牧野 信一
冬日抄
(手紙を書く)
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空想は自然の隈どりだ、櫟林の奥で捕獲した一個のムラサキ蝶を験めようか! 樺色地に薄墨の豹紋を散らして、光りの屈折に随つては、真紫に輝く見るも鮮やかな幻色を呈するのだ。或ひは土の上を飛んでゐる一個のミチシルベをつまみあげて見ようか! シヤムや西蔵の仏像の色彩を連想する類ひのエメラルド・バミリオン、黒、白の斑点――何と、これが土の上に飛んで、土に隠れる警戒色なのだらうか。虹の七色の原色は、虹の明るさをもつて、まんまと奴等の体内に滲み込んでゐるのだ。俺達の空想だつて、在るべきところに在り、発生すべきところに飛んでゐた時には、そいつはそのまゝ虹色の保護色であり、幻色の恵みに他ならぬのだ。奴等を標本箱に収めたところを見る者は、その色彩の「不自然さ」に瞠目して、一体奴等は、こんなにパツとした色彩りをもつて何処に隠れられたものかと疑ふのだ。
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