牧野 信一
駒鳥の胸
花園の春
「黄金の羽虫、どこから来たの。蜜飲の虫、あらあら、いけないわ。そんなに私の傍へ寄つてはいやよ、日向の雛鳥、あつちへお行きよ。」
レオナさんは緑石の様に輝いた美しい瞳をうつとりとかすめて独言のやうに呟きました。
「まあ、随分酷いわレオナさん。私のことを羽虫だつて、そばへ寄つてはいけない、あつちへお行き、ですつて。いゝわいゝわ、どうせ私が傍に居てはお嫌なんでせうよ。」艶子はレオナさんの今の言葉は自分に向つて云つたのだ、と思ひましたのですつかり怒つてしまひました。それでもレオナさんは素知らぬ風で花を瞶めて居りました。さうして又こんなことを云ひました。