牧野 信一
妄想患者
一
ふつと、軽い夢が消えると、窓先を白い花が散つてゐた。何かにギクリと悸された鼓動の余韻が、同じやうに静かに、心から散つて行くのを、私は感じた。
「桜の花だつたか。」、私はさう思つた。
ガジガジと、インク壺の中へペン先を突き込む音がする、慌しく「ノート」の頁をめくる音がする。
牧野 信一
一
ふつと、軽い夢が消えると、窓先を白い花が散つてゐた。何かにギクリと悸された鼓動の余韻が、同じやうに静かに、心から散つて行くのを、私は感じた。
「桜の花だつたか。」、私はさう思つた。
ガジガジと、インク壺の中へペン先を突き込む音がする、慌しく「ノート」の頁をめくる音がする。