小川 未明
五銭のあたま
ある田舎に、同じような床屋が二軒ありました。たがいに、お客を自分のほうへたくさん取ろうと思っていました。一軒が、店さきをきれいにすれば、一軒もそれに負けまいと思って、大工を呼んできてきれいにしました。
一軒で、お客に、お茶を出せば、また一軒でも、それを見習って、お客にお茶を出したのであります。そして、各々の床屋の主人は、すこしでもていねいに、客の頭を刈って、また、ていねいに顔を剃ったのでした。
「あすこの家は、しんせつで、それに仕事がていねいだから、あすこの家へゆくことにしよう。」と、客にいってもらえれば、このうえのないしあわせでありましたからです。
だから、お客は、どちらの家へいったら、いいものだろうと迷いました。なかには、あちらの家へ一度いったら、そのつぎには、こちらの家へゆくことに、心のうちできめたものもありました。