小川 未明
海のかなた
海に近く、昔の城跡がありました。
波の音は、無心に、終日岸の岩角にぶつかって、砕けて、しぶきをあげていました。
昔は、このあたりは、繁華な町があって、いろいろの店や、りっぱな建物がありましたのですけれど、いまは、荒れて、さびしい漁村になっていました。
春になると、城跡にある、桜の木に花が咲きました。けれど、この咲いた花をながめて、歌をよんだり、詩を作ったりするような人もありませんでした。ただ、小鳥がきて、のどかに花の咲いている枝から枝に伝ってさえずるばかりでありました。
小川 未明
海に近く、昔の城跡がありました。
波の音は、無心に、終日岸の岩角にぶつかって、砕けて、しぶきをあげていました。
昔は、このあたりは、繁華な町があって、いろいろの店や、りっぱな建物がありましたのですけれど、いまは、荒れて、さびしい漁村になっていました。
春になると、城跡にある、桜の木に花が咲きました。けれど、この咲いた花をながめて、歌をよんだり、詩を作ったりするような人もありませんでした。ただ、小鳥がきて、のどかに花の咲いている枝から枝に伝ってさえずるばかりでありました。