小川 未明
汽船の中の父と子
古い、小形の汽船に乗って、海の上をどこということなく、東に、西に、さすらいながら、珍しい石や、貝がらなどを探していた父子の二人がありました。
あるときは、北の寒いところで、名もない小さな島に上がって、珍しい青い石を探したこともあります。また、あるときは、南の熱い太陽の赤々と照らす、真下のところで、赤い石を掘ったこともありました。
二人は、珍しいものが手にはいると、いろいろな国の都へ、どことはかぎらずに、船の便宜によって上陸しました。そして、にぎやかな街の中を歩いて、それを貴族に売ったり、金持ちに莫大な金で売りつけたり、また商人に譲ったりしたのであります。
父と子といっても、すべて、父親一人の力でありました。男の子は、まだ、それほど年がいかなくて、ただ、父親のゆくところへは、どこへでもついて歩いてゆくばかりであったからです。