小川 未明

子供と馬の話

九月一日の大地震のために、東京・横浜、この二つの大きな都市をはじめ、関東一帯の建物は、あるいは壊れたり、あるいは焼けたりしてしまいました。そして、たくさんな人間が死にましたことは、もうみんなの知っていることだと思います。いままで動いていた汽車はトンネルやレールが破壊したために、もう往来ができなくなりました。また、毎晩華やかな街を照らしていた電燈は、装置が壊れてしまったために、その後、幾日というものは、都じゅうが真っ暗になり、夜は、ランプをつけたり、ろうそくをともさなければなりませんでした。

そんなように、いままでつごうがよく、便利であったものが、すっかり狂ってしまって、三十年も四十年もの昔に帰ったように、不便なみじめな有り様になったのでありました。

こういうめにあいますと、いままで、便利な生活をなんでもなく思っていた人々ははじめて、平和な日のことにありがたみを感じたのでありました。そして、また、それが昔のようになるのには、どれほど、多くの労力と日数とがかからなければ、ならぬかということを知ったのであります。

私たちは、けっして、ひとりでに、この世の中が便利に、文明になったと思ってはいけません。たとえば、一つのトンネルを掘るにも、どれほど、多くの人たちが、そのために苦しみ働いたかを考えなければならないのです。

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