小川 未明

さかずきの輪廻

(この童話はとくに大人のものとして書きました。)

昔、京都に、利助という陶器を造る名人がありましたが、この人の名は、あまり伝わらなかったのであります。一代を通じて寡作でありましたうえに、名利というようなことは、すこしも考えなかった人でしたから、べつに交際をした人も少なく、いい作品ができたときは、ただ自分ひとりで満足しているというふうでありました。

しかし、世間というものは、評判が高くなければ、その人の作ったものを重んずるものでありません。一人や、二人は、まれに、目をとめて見ることはあっても、問題にしなければ、永久に、それだけで忘れられてしまうのです。

落ち葉にうずもれた、きのこのように、利助の作品は、世に表れませんでした。そしてうす青い、遠山ほどの印象すらもその時代の人たちには残さずに、さびしく利助は去ってしまいました。

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