小川 未明

すみれとうぐいすの話

小さなすみれは、山の蔭につつましやかに咲いていました。そして、いい香りを放っていました。

すみれは、そこでも、安心をしていることは、できなかったのです。なぜなら、そのすみれをたずねてくるものは、ひとり、美しいちょうや、かわいらしいみつばちばかりではなかったからです。

「ここにも、すみれが咲いていた。とって香りをかいでごらんなさい。いい香りがするから。」と、山に遊びにきた、子供たちはいったのです。

すみれは、自分ほど、不幸なものは、この世の中に、ないと思いました。小さな体で、しかも、ものの蔭に、つつましく咲いているのを、それすら安心ができなかったからです。

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