小川 未明

すももの花の国から

人々のあまり知らないところであります。そこには、ほとんど、かずかぎりのないほどの、すももの木がうわっていました。そして、春になると、それらのすももの木には、みんな白い花が、雪のふったように咲いたのであります。

その木の下をとおると、いい匂いがして、空の色が見えないまでに、白い花のトンネルとなってしまいました。それは、あまりに白くて、清らかなので、肌が、ひやひやするようにおもわれたのであります。

しかし、ゆけども、ゆけども、白い花のトンネルはつきませんでした。まるで、白い雪の世界をあるいているようなものでした。けれど、雪ではありません。雪は、真っ白でありますが、すももの花は、いくぶん、青みがかっていて、それに、いい匂いがしました。

しまいには、どこが出口やら、また、入って、あるいてきたところやら、わからなくなってしまいました。すると、そのすももの林のなかに、一軒のわら屋がありました。その家には、しらがのおばあさんと、三人の姉弟がありました。いちばん上の姉は、十四で、つぎの妹は、十二で、下の弟は、八つばかりでありました。

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